貧血とは
貧血とは「血液の中にあるヘモグロビンの量が少なくなった状態」のことを表す言葉です。
ヘモグロビンは、体中に酸素を届ける重要な役割があります。ヘモグロビンが減ることで、全身に十分な酸素を届けることができなくなり、動悸(ドキドキする)、息切れ、めまい、だるさ、たちくらみなどの症状が現れるようになります。
WHO(世界保健機関)はヘモグロビン値の国際的な基準を定め、これを下回る状態を「貧血」としています。
●小児 5-11歳 11.5以下
●12-14歳 12.0以下
●非妊娠女性(15歳以上) 12.0以下
●妊娠女性 11.0以下
●男性(15歳以上) 13.0以下
World Health Organization: Haemoglobin concentrations for the diagnosis of anaemia and assessment of severity より引用
日本では貧血で多くの人が悩んでいます。大人の女性の25%が発症しているともいわれ、とても身近な病気なのです。
貧血の原因と症状
貧血の原因
貧血になる原因はたくさんありますが、大きく2つにわけることができます。
- 赤血球やヘモグロビンが十分に作られない
鉄欠乏性貧血、銅欠乏性貧血、亜鉛欠乏症性貧血、悪性貧血、再生不良性貧血、 腎性貧血 など - 作られたヘモグロビンが壊される、失われる(失血)
溶血性貧血、出血 など
貧血の症状
貧血になると、めまい、たちくらみ、動悸、息切れなどがおきやすくなります。ちょっとしたことで疲れやすくなったり、だるくなったり、持久力がなくなります。
また、頬や顔の赤みはヘモグロビンの赤さが影響しています。貧血があると顔色が悪くなり、下まぶたの内側が白っぽくなることがあります。
他にも有名な症状は、爪が薄く曲がる(スプーン爪)になる、氷をたくさん食べるようになるなどがあります。
全身に現れる貧血の症状ですが、軽度であれば気付かないことが少なくありません。少しずつ貧血が悪くなると、体も慣れてしまうので、悪化するまで気付きにくくなります。自覚症状が強くなる、健康診断で指摘されるなど重度になってから気付く人も少なくないのです。
貧血と亜鉛の関係
貧血の原因には「ヘモグロビンに含まれる鉄」が関わっていることはよく知られています。
実は、「亜鉛」も赤血球の産生・機能維持などに関わっていることがわかっています。亜鉛が不足すると、赤血球の元を作る・成長させることができにくくなるのです。
それだけではなく、赤血球の細胞膜が弱くなってしまい、赤血球が壊れやすくなってしまいます。
亜鉛不足は赤血球を上手く作れないだけでなく、長持ちさせることができにくくなり、結果として貧血をおこしてしまうのです。
日本人の鉄と亜鉛の1日の平均摂取量をみると、女性は各年代にわたり国が定めた推奨量を下回っています1)。女性の貧血の原因は、鉄だけでなく亜鉛が不足している可能性も十分に考えられるのです。
特に注意の必要な方
以下の方は、亜鉛欠乏性の貧血になりやすいため、注意が必要です。2)
- 妊産婦や授乳中の方
妊娠中は赤ちゃんの成長・発育のために、亜鉛は欠かせません。また母乳は血液から作られるので、亜鉛の消費量が増え亜鉛が不足しやすくなります。その結果、亜鉛欠乏性貧血になりやすいため、より多くの亜鉛を意識的に摂る事が必要なのです。 - 偏った食事や極端なダイエットをする方
亜鉛は肉や魚に多く含まれています。偏った食生活や極端なダイエットでは、亜鉛の摂取量が極端に少なくなっている可能性があります。それだけでなく、亜鉛の吸収を悪くする食品添加物(ポリリン酸)が多く含まれた加工食品を食べる人も亜鉛が不足し、貧血になりやすいといわれていて注意が必要です。 - 高齢者・胃の手術後の方
高齢者は食事の量が減りがちです。
また、胃を切除した方は胃から吸収できる亜鉛の量が減る、食事量自体が減ることで食事から十分な量の栄養素(ミネラル)を摂取できなくなる可能性があります。そのため、亜鉛が不足し貧血のリスクが高くなります。 - アスリートなどスポーツ競技者
激しい運動で汗や尿から亜鉛が排泄されやすくなり、結果として体内の亜鉛が不足しやすくなります3)。スポーツが原因で起こる貧血を「スポーツ貧血」とも呼びますが、その原因として亜鉛欠乏性貧血が隠れていることも少なくありませんので注意が必要です。
1)厚生労働省:平成27年 国民健康・栄養調査
2)児玉 浩子ほか. 日本臨床栄養学会雑誌 2018; 40(2): 120-167
http://jscn.gr.jp/pdf/aen2018.pdf
3)西山宗六:血液疾患と亜鉛-特にスポーツ競技者の亜鉛欠乏性貧血について-.治療 2005 ; 87 : 27-31