亜鉛不足を改善するためには

亜鉛不足改善

亜鉛不足を把握する方法

亜鉛不足を改善するためには、まず、自分の血液中の亜鉛量(血清亜鉛値)を知る必要があります。

亜鉛は血液検査で簡単に調べることができます。

亜鉛は健康診断で調べるような一般的な検査項目ではありません。
そのため、いままで一度も調べたことがないという人も少なくないのです。
このサイトに示したような病状や、気がかりな症状があり、血清亜鉛値の検査を希望する場合には、かかりつけ医に相談しましょう。

血清亜鉛値

日本臨床栄養学会は、血液中の亜鉛の正常範囲の目安(血清亜鉛の基準値)を80〜130µg/dLとしています。

血清亜鉛値と臨床症状から、血清亜鉛値の基準を満たさない状態を「潜在性亜鉛欠乏」と「亜鉛欠乏症」の2種類に分けることができます。
※低亜鉛血症で亜鉛不足に伴う症状がある場合を亜鉛欠乏症と呼びます。
※低亜鉛血症とは、亜鉛欠乏状態を血清亜鉛値から捉えたものであり、亜鉛欠乏症とは、亜鉛欠乏による症状と検査所見(血清亜鉛値、血清ALP値)から捉えたものです。

亜鉛欠乏症

  1. 下記の症状と検査結果のうち1項目以上を満たしている
    1)症状(皮膚炎、口内炎、味覚障害等)があらわれている
    2)血液検査の血清アルカリホスファターゼ(ALP)値が低い
  2. 上記の症状の原因となるほかの病気が見あたらない
  3. 血清亜鉛値が60µg/dL未満
  4. 亜鉛を補充することにより症状が良くなる

⇒①~④すべてを満たす状態を「亜鉛欠乏症」と診断します。

潜在性亜鉛欠乏

  1. 下記の症状と検査結果のうち1項目以上を満たしている
    1)症状(皮膚炎、口内炎、味覚障害等)があらわれている
    2)血液検査の血清アルカリホスファターゼ(ALP)値が低い
  2. 上記の症状の原因となるほかの病気が見あたらない

⇒①、②を満たし、血清亜鉛値が60~80µg/dL未満の状態を「潜在性亜鉛欠乏」と診断します。

血性亜鉛値採血時の注意点

血清亜鉛値は一般的に午前中は高く、午後は低い傾向があります。日内変動と呼ばれ、誰でも起きる身体の生理的な変化です。より正確な血清亜鉛値を知るためには、「午前中に朝食を摂らずに測定する」のが良いとされています。詳しくは医師に相談するとよいでしょう。

低亜鉛血症の治療

低亜鉛血症とは、血清中の値から見た亜鉛不足の状態を指す言葉です。
低亜鉛血症を治療するには、まずはじめに食事療法を行います。食事療法で不十分な場合や亜鉛欠乏症の症状がひどい場合には、亜鉛補充療法(飲み薬などで亜鉛を補充する治療)を行います。
※亜鉛を含むサプリメント(栄養補助食品)を摂る方法と医師に処方してもらう内服薬を服用する方法がありますが、こちらでは薬の服用について紹介いたします。

1.食事療法

血清亜鉛値が低いことが確認された場合には、以下のような「亜鉛を多く含む食べ物」を積極的に摂るようにしましょう。
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亜鉛を多く食品

1-1.食事療法の注意点

亜鉛を多く含む食べ物を摂取する際には、以下の点に注意が必要です。

  1. 一緒に食べると「亜鉛の吸収を促進する食品」と、「亜鉛の吸収を妨げる食品」があります。食べ合わせ・飲み合わせには注意が必要です。
    <吸収を促進する食品>
    肉類、魚類に多く含まれる動物性たんぱく質(グルタミン等のアミノ酸)、ビタミンC、クエン酸、リンゴ酸等を含む酸性の食べ物
    <吸収を妨げる食品>
    コーヒー、オレンジジュース、カルシウム、未精製の穀類や豆類に多く含まれる「フィチン酸」
  2. 推奨される1日の亜鉛の摂取量は、成人男性11mg、成人女性8mg(妊婦は+2mg、授乳婦は+4mg)です。
  3. 亜鉛を一度にたくさん摂取しても、血清亜鉛値が急に改善することはないといわれています。亜鉛は継続的にとり、血清亜鉛値を安定させることで、さまざまな身体症状の改善が期待できる栄養素です。継続して摂取するようにしましょう。
    【亜鉛に関しての総合情報サイト】亜鉛を含む食品|亜鉛で元気|ノーベルファーマ株式会社 (aendegenki.jp
  4. 2.亜鉛補充療法

    亜鉛は先ほどご紹介したように、様々な食材からバランスよく食事として摂取する事を基本として考えていただきたいですが、血清亜鉛値が低く、食事療法だけでは不十分と医師が判断した場合は、亜鉛製剤(飲み薬やサプリメント)で亜鉛を補充する治療を行う場合があります。

    内服開始後に気になる症状があらわれた場合は、必ず、医師・薬剤師に相談しましょう。

    次のような場合に、亜鉛製剤による治療が行われる事があります。

    • 血清亜鉛値が原則80μg/dL未満である
    • 食事療法だけでは効果が不十分と医師が判断した場合
    • なんらかの亜鉛欠乏症状が認められる場合、もしくは亜鉛欠乏症の症状の可能性がある場合

    亜鉛補充療法

    現代人と亜鉛

    亜鉛は身体の中で作ることができないため、食べ物から取り入れる必要がある栄養素です。平成27年に行われた「国民健康・栄養調査」によると、1日あたり亜鉛推奨量は年齢毎に異なっていますので、意識して献立や食事内容をご検討ください。
    日本人の1日あたり亜鉛推奨量

    性別 男性 女性
    年齢等 推定平均必要量 推奨量 目安量 耐容上限量 推定平均必要量 推奨量 目安量 耐容上限量
    0〜5(月) 2 2
    6〜11(月) 3 3
    1〜2(歳) 3 3 2 3
    3〜5(歳) 3 4 3 3
    6〜7(歳) 4 5 3 4
    8〜9(歳) 5 6 4 5
    10〜11(歳) 6 7 5 6
    12〜14(歳) 9 10 7 8
    15〜17(歳) 10 12 7 8
    18〜29(歳) 9 11 40 7 8 35
    30〜49(歳) 9 11 45 7 8 35
    50〜64(歳) 9 11 45 7 8 35
    65〜74(歳) 9 11 40 7 8 35
    75以上(歳) 9 10 40 6 8 30
    妊婦(付加量)   +1 +2
    授妊婦(付加量) +3 +4

    〔推奨量〕 厚生労働省:日本人の食事摂取基準の概要 2020年版より作表

    亜鉛不足の原因は、年齢や生活状況によってさまざまです。

    • 偏った食事や極端なダイエットは、亜鉛摂取量が不足する可能性が高いといわれています。
    • 成長期の子どもは、摂取量不足や吸収障害をおこす可能性があります。
    • 大人は摂取量不足や亜鉛の排出を促進させる作用をもつ薬剤の長期服用、糖尿病や慢性の肝臓病などがあげられます。
    • 妊産婦や激しいスポーツを行う人も必要量が増えるため、相対的に亜鉛が不足する可能性があります。
監修:
帝京平成大学大学院 健康科学研究科
特任教授 児玉 浩子 先生